「ファンも選手も球界の一因です」−このフレーズにぶるっと来ました。巨人・渡辺恒雄氏の「たかが選手」の発言に象徴されるプロ野球機構の態度に、野球ファンならずとも国民の多くが起こったのではないでしょうか。
近鉄・オリックスの合併に端を発して、さらなるチームつぶしとリーグへ突き進むかに見えたプロ野球界。選手会が声をあげ、スト権を背景に対峙すると、読売グループは巨人人気をてこに他球団を恫喝し、ファンに対しては巨人OBを狩り出して自らの巨大メディアを使って反撃しました。機構側の団体交渉に臨む態度も不誠実でした。「選手は労働者じゃない」「ストをすれば損害賠償を請求する」、渡辺氏は「高橋(由伸巨人選手会長)君はまだ若い」などと言って、あからさまな選手会攻撃に出ました。仮にこれらの経営側の言動が公の俎上にのぼれば、不当労働行為・組合への支配介入・不誠実断行の認定・是正命令が行われたことは確実でした。マスコミが労働基本権にかかわる内容を無批判に報道したのには驚きました。
財界のトップにつながる面々がこれらのことを知らないはずがありません。ともかく、1回目のストライキが粛々と行われて、その後の交渉・妥結の経過はみなさんご存知の通りです。渡辺氏のオーナー辞任、新球団の名乗り、「政府の規制改革推進会議の議長を務める宮内氏(オリックス会長)が新規参入を妨げるのはおかしい」などの声も出て、オーナー側の戦列にほころびが出ました。ファンの自主的な動きが起こり、労働団体の中央組織が大きな支援に動きかねない、選手会が「ゲームをしない」以上の行動を国民的に呼び掛けたらオーナーだけでコトがおさまらない事態に至ることも想定できました。1度のストが道理を力にして、紛争を終結に向かわせました。(2004.10)
ナベツネは、いまだに暗躍しているようです。コミッショナーもただのお飾りのよう。(2012.7)