個人事業は、思い立ったときが開業です。法人設立には登記の手続きが必要です。

「思い立ったとき」といっても、すっぐに商売が始められるわけではありません。お店や事務所の確保、備品や機械の購入、商品の仕入れ、人材の確保などの投資にお金がかかります。備品など何年も使えて値段の高いものは、償却資産としてその年の減価分を数年に分けて費用に計上します。開業費用は数年に分けても、その年に費用に計上してもかまいません。個人では商売を始めた日を開業の日と考えてさしつかえありません。開業までの費用はもれなく帳面につけておきましょう。

法人も個人とほぼ同じですが、法人の設立の日が事業開始の日となります。法人の登記費用を忘れずに記帳します。

個人と法人の大きな違いは、法人が会社と社長の「お財布」が完全に分けられているのに対して、個人は会社の事業と個人の消費生活がひとつの「お財布」からまかなわれていることです。個人事業主(社長)が使ったお金のうち事業に関係のない出費(生活費)は、個人の所得の計算の上で必要経費になりませんが、法人の場合、月々一定の金額に決められている社長給与は費用になります。公の支出と個人消費の支出とがどれだけきっちり区別されているか、個人と法人の社会的な信用度の違いとなっています。

まず個人から商売を始めて、一定規模になったら法人を設立して、個人の事業用資産を移すということもできます(法人成り)。

  法人会社 個人会社
設立

法務局に登記の手続きが必要

税務署・府市町村役所に開業届

税務署に開業届
事業年度 自由。4〜3月とか6〜5月とか事業の繁忙期などを考慮して自由に決められる。 1〜12月と決められている。
代表者の扱い 会社から給料をもらう。実質自分で自分の給料を決められるサラリーマンになる(ただし、毎月の給料は変えられない。賞与は原則認められない)。退職金も支払える。 自分の給料は経費にならない。なぜなら、代表者の生活費は所得からまかなわれるもので、所得の計算に入れてはならないから。退職金もない。
税金(青色申告の場合) 会社に赤字が出た場合には、その後の黒字と相殺できる(原則9年間)。ただし、住民税の均等割り(最低7万円)の負担はある。役員給与の所得税は従業員と同じく源泉徴収・年末調整をする。法人税は定率で課税される。 赤字が出た場合、その後の3年間の黒字と相殺できる。源泉徴収・年末調整は従業員と青色専従者のみ。所得税は超過累進税率で課税される。
社会保険の加入 社会保険(厚生年金・健康保険)は原則、加入しなければならない(保険料の会社負担がある)。 5人以下は社会保険の加入は任意です。

法人の設立と開業とは

 法人で事業を始めるということは、当然にまず法人を作って(法人の登記の手続きをして)、その後に具体的な事業の開始に取り組むということになろうかと思います。個人事業が生身の人間の事業活動であることと異なります。法人は法務局に登記して初めて、得意先や仕入れ先との取引ができます。しかし、実際には登記の手続きのための活動と、事業そのものの立ち上げ作業は同時に進行するものです。

 そこで、法人設立のための費用は設立前に発生する費用ですが、「創立費」として記録します。また、開店するまでに支払う、お店や事務所の賃借料や消耗品費用は「開業費」として創立費とは区別して記録しておきます。

 創立費も開業費も会計処理のうえでは全額支出した事業年度の費用に処理してもかまいません。あるいは、いったん「繰延資産」として資産計上して、5年以内に償却する(各年度に分割して費用に計上する)ことも認められています。税金の計算上も全額費用または任意償却が認められています。

 こうした処理は、創立費・開業費とも、そのお金の支払いが支払った事業年度のみに売り上げにつながったとはいえないものの、他者に譲れる交換価値のある資産ともいえないため、会社の経理処理をそのまま認めようというものです。

 そこで、法人においては設立の日と開業の日とは一応違う日にちということが考えられます。しかし、株式会社は、営利を目的に設立するものですから、設立後にたとえ開業までに時間がかかっても「法人設立届出書」を税務署に提出する必要があります。「青色申告の承認申請書」も同様です。設立して即休業という事態もあろうかと思います。結果として所得がゼロないしは赤字(創立費を費用計上した場合)となり法人税の納税はなくとも、住民税の課税(均等割額)が生じることがあります。また、法人が新たにお店や事務所を本店以外の市町村に設置するときは、その市町村役所に「法人の開設届書」を提出しなければなりません。

 個人と法人の違いは「お財布」が分けられていることと申しました。法人になると会社と個人の二つの「お財布」ができることのメリットは、税金の負担の面からみると三つあります。

① 自分の給料を自分で決められるということは、その範囲で法人の利益を調整できる。この給与所得には所得税の計算上「給与所得控除」という費用が認められるため、これも節税の手段として活用できる。

② 所得税は超過累進税率・法人税は定率ということで事業の利益が大きければ法人により多く利益をためて(留保)おくことができる。

③ 相続が開始したとき(オーナーが亡くなったとき)に、会社の株式が相続財産となるが、その評価は低く抑えることができる。

つまり、個人事業の「一つのお財布」では事業規模が大きくなったとき(利益が出たとき)に税負担の面で不利であることがわかります。

また、個人の事業を「法人成り」するタイミングにおいて消費税の免税の機会を得ることもできます(資本金1千万円未満の会社設立の場合)。

 法人を設立して、個人事業をその法人に移転することができます(法人成り)。その際、個人の棚卸資産や機械等の事業用資産を法人に売る(譲渡する)カタチになります。この場合、時価で譲渡するのが原則ですが、時価と大きな相違がなければ(棚卸資産=商品なら売値の70%未満、固定資産なら時価の2分の1未満でなければ)、帳簿価額で譲渡しても問題ありません。つまり、土地・建物の譲渡はともかく機械や車などの資産を法人に移転しても、法人成りによる利益は個人には発生しません。ただし、1月1日から法人成りまでの期間の収益は、その年の個人の所得として、翌年3月15日までに確定申告します。

 また、個人が持っている土地・建物で法人が引き続き使用するものは法人に貸し付けることになり、適正な賃貸料を設けて法人から受け取ることができます。つまり、個人は役員報酬とともに賃貸料を収入として得、賃貸料は不動産所得として申告することになります。この不動産所得があれば、個人で行っていた青色申告はそのまま続けることができます。

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