金融機関との付き合い方

複数の銀行と口座の開設から。融資は日本政策公庫などの制度融資から始めましょう。

金融機関との付き合いは事業のパートナーとして大切です。資金の出入り、従業員の給与振込から付き合いを始めていきましょう。創業期の融資は、日本政策金融公庫が行っている各種の創業支援融資という制度があります。無担保・無保証人の制度もあります。保証協会の保証で銀行から借り入れる方法もあります。いずれにしても融資の際には、自社の事業計画を作って、融資を受ける目的など自社の将来性をアピールしなければなりません。そのためには、これまでの業績とこれからの展望を数字で説明しなければならないのです。また、資金繰り表を示して日常の資金管理の状況や返済の確実性を説明しましょう。そのような計画書の相談にもぜひのらせてください。

また、大阪府や大阪市が保証をしている中小企業向けの制度融資もあります。「開業資金」、売り上げの減少や震災の影響で資金繰りが苦しいときに運転資金を融資してくれる「経営安定化資金」もあります。この申込みも応援します。

余談ですが、銀行が税理士を紹介することがあります。私の信条としては「独立・公正」な税理士の立場からは、銀行からのあっせんには「?」をつけざるを得ません。私は、銀行はもちろん生命保険の代理店にもなるつもりはありません。

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生命保険契約の見直しを

 「金融機関との付き合い」に入るのかどうか、ちょっと疑問ですが、「つきあい」で生命保険に加入する人(法人)もいらっしゃるので、ご指摘しておきます。個人の場合は、所得税の計算上、生命保険料は必要経費にならない、「生命保険料控除」の対象である、ということです。問題なのが法人が契約する生命保険です。保険の外交の方は「個人の契約はいっぱいなので会社(法人)で」という勧め方をされます。個人のリスクを法人がカバーするという錯覚を起こしがちですので、法人が契約をする場合、法人にとってどういうリスクがあるのかよく理解されて検討されることをお勧めします。

 今回、生命保険料に限って経理処理の仕方を確認しておきます。以下、すべて法人が契約者で、かつ、被保険者(災いが起こるかもしれない人)が役員または使用人である場合を前提としています。

1.生命保険の種類

 生命保険の種類は、各社独自のニックネームを含めて多数に上りますが、経理処理上は、以下の3種類に分けられます。

@ 養老保険

 被保険者の死亡または生存を保険事故とする生命保険(死亡保険金または満期保険金が出る保険)

A 定期保険

 一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険(掛け捨ての保険)

B 傷害保険

 上記の保険に傷害特約を付与した契約がほとんどになっています。

2. 経理処理の基本(法人税取扱通達 基本通達9-3-4〜6)

@ 傷害特約部分の保険料は損金計上(費用になる)

保険料のうち傷害特約部分は、損金計上されます。ただし、特定の役員・使用人のみを保険給付の受取人としている場合は、会社が支払う特約部分の保険料はそのものに対する給与(損金)となります。

A 養老保険は保険受取人が何者かによって取り扱いが異なります。

生存保険金・死亡保険金ともに受取人が会社の場合                全額資産計上

生存保険金・死亡保険金とも被保険者または被保険者の遺族          給与

生存保険金の受取人が会社、死亡保険金の受取人が被保険者の遺族   

 保険料の1/2は資産計上・1/2は損金計上

B 定期保険は原則損金計上(ただし長期平準定期保険は例外)

保険金の受取人が会社であるか、遺族であるかを問わず損金となります。

3. 長期平準定期保険の場合(個別通達昭62)

 定期保険のなかには非常に長期の保険期間に定額の保険料を支払うものがあります。そのうち、保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、加入時の被保険者の年齢に保険期間の年数の2倍を加えた年齢が105歳を超えるものを「長期平準定期保険」といいます。この保険は加齢するほど保険事故の可能性が増すことから保険期間の前半部分に前払いの保険料が含まれているという考え方により、保険期間の6割の期間の保険料についてはその1/2を資産計上(前払い保険料)し、その資産計上の累積額はあとの4割の期間に取り崩して損金に計上することとされています。

4. 契約書・プランを確認しよう

 保険契約の際は、保険が補償しているものは何か、経理処理についてよく確認しましょう。損保系の会社が生保を扱い、生保系の会社が損保を扱うことがあります。保険のなかには「預金」とほぼ同じもの(「資産計上する」もの)があることを知っておきましょう。保険の受け取り(会社)と被保険者(役員・使用人)が異なる場合には後々のトラブルがないよう注意すべきです。また、会社の契約と役員などの個人の契約がごちゃ混ぜになって保険料が支払われているケースもよく見られます。保険外交員主導の契約は見直してみましょう。契約の前に、経理処理の面からでも保険の中身をよりよく理解することもできますので、税理士に相談されたらいいと思います。

 

死なない法人に生命保険は必要でしょうか

 「法人で生命保険の契約を勧められたんですが」という相談には、私は「法人は死にません」と答えます。死ぬのは人間だけです。社長や役員・従業員が死ぬわけで、その死亡について法人がどのようなリスクを負い、どう保険で補てんするかという問題です。生命保険契約は、契約者でかつ保険料の負担は法人(会社)、保険金の受け取りも法人という契約です。生命保険の加入にあたっては、いつも法人がこうむる損害(リスク)についての検討が足らないのではないかと思うのです。法人ではない被災者等にたいしてその損失を直接補うものではないのです。

 保険契約者・保険金受取人ともに法人であることを前提として述べます。

 たとえば社長が亡くなったとき、法人にとってどのようなリスクが降りかかってくるでしょうか。@会社の信用が落ちるA会社の営業力が落ちるB死亡退職金を支払わなければならない、とかいうことです。ここでよくある勘違いは、保険金の受け取りは法人であることです。この時点では全額法人税の課税対象です。火災保険のように、圧縮記帳によって課税を繰り延べることはできません。その後の信用や営業力を引き続いて補てんするものではないのです。

 つぎに「死亡退職金の支払い」は確かに大きなリスクです。しかし、これとて同族会社の事業を引き継ぐ遺族に支払われるわけから、その時点で調整はつくはずです。保険金が当然に即退職金になるわけでもなく、もし、退職金の支払いの確定が遅れて、保険金の受け取りの事業年度の翌年度以降になると課税されてしまい、支払いの原資としては目減りしてしまうことが考えられます。

 以上は定期保険(掛け捨て保険)の例ですが、養老保険の場合、被保険者(役員・従業員)が死亡しても生きていても(満期になっても)、保険金が支払われますから「預金」と同じ扱いになります。経理処理は支払全額が資産計上です。経費とはなりません。満期保険金は保険料支払総額よりも少なくなることは覚悟しなくてはなりません。

 このように死亡退職金の支払いに充てるために保険契約することに最大のメリットがあると私は考えています。現在の制度では役員退職金の各年の引き当ては経費として認められていないため、この点で保険契約は有意義だと思います。

 また、がん保険・医療保険(その基本は満期保険金の支払いのない定期保険です)の受取人が法人となっている場合に入院給付金等の受け取り相当額を被保険者に支払いたい、とよく相談を受けますが、給与・賞与の支払いの扱いを受けますので、注意が必要です。欠勤中の給与を支払っていれば、それで十分法人はリスクを背負っています。受取人を被保険者とする契約も可能ですが、従業員・役員全員を被保険者とする必要があります。役員だけを被保険者とする契約は役員給与として源泉所得税の課税の対象になります。ここでも、保険契約が何のリスクを補償するものであるのかをよく考える必要があります。役員・従業員への福利厚生目的なのか、会社経営上のリスクを減らすためなのか、ということです。

 このように法人契約の生命保険の活用は保険本来の役割から見ると限定的だと言えそうです。金融商品と見た場合、低金利の時代で資金に余裕のない中小企業にとってメリットがあるものとは思えません。

終身保険は養老保険の「超長期・死亡のみ」バージョン

 生命保険は養老保険(死亡または生存<満期>を保険事故とする保険)と定期保険(一定期間における死亡を保険事故とする保険)しかないと申しましたが、終身保険は期間なし(だから終身)・死亡のみ(満期なし)という養老保険の一種です。

 人は必ず死ぬものですから、いずれ保険金は支払われます。したがって、保険料は預金と同じという理屈で、法人が支払う保険料は費用とはなりません。もっとも終身保険はふつう傷害特約がつけられているため、保険料のうち「主契約」部分を資産計上し、傷害特約部分は費用計上できます。保険料のうちに傷害特約の金額が多いため、生命保険とはいうものの、その大きな部分は傷害保険といってもいいでしょう。傷害保険の受け取りも法人となります(保険金受取人が役員等の場合は「給与」の扱いになります)から、法人契約するのはどうでしょうか。

 死亡退職金を支払う場合はともかく、被保険者が退職した時には、保険契約を精算する必要があります。

 死亡保険金も多くはなく、長生きすれば保険金も解約返戻金も払った保険料よりも少なくなるならどれほどメリットがあるでしょうか。その分、預金した方がよいと思います。法人が契約するものとしては保険がカバーするリスクが小さく、節税の効果もないということです。

法人契約の生命保険ならまず定期保険

某生命保険会社があげる「企業経営者を取り巻くリスク」は次の通りです。

@    死亡退職金・弔慰金の準備

A    生存退職金の準備

B    従業員の保障・福利厚生

C    債務返済資金の準備

D    事業承継資金の準備

E    入院・医療費用

F    相続対策

G    遺族の生活資金

 このうち法人が直接的に負うリスクは@からBまでです。Cについて、設備投資資金や運転資金の調達のために生じた法人の債務は、法人が保険契約で精算するものでは本来ありません。同様にDは過去の経営判断の失敗を精算する意味合いがあるとしても、法人契約の保険で手当てすることではないと思います。EからGも個々人がリスクを手当てするものです。

 結局、被保険者の死亡を原因とする法人のリスクをカバーするものとしては、働き盛りの経営者の死亡による会社のダメージや死亡退職金(退職慰労金)の支給に備える、定期保険が法人契約の生命保険としては最適ではないでしょうか。

 現在退職金の支払いに備える退職給付会計は、法人税法上損金に算入できないため、使用人対象の中退金以外は、役員と従業員全員を対象とする定期保険か死亡保険金被保険者遺族受け取りの養老保険(二分の一損金プラン)が税務上は有利になります。

 その際注意しなければならないのは、定期保険の保険金受取人は法人であること、死亡受取人が遺族である養老保険の場合は従業員全員が被保険者である契約であること、です。役員や特定の従業員の遺族が保険金受取人である場合あるいは特定の従業員にとってとくに有利な契約などは、保険料の支払いについて給与とされるため源泉所得税の徴収が考慮されなければなりません。

 また、保険料の支払いは、資金繰りを難しくする一因にもなりかねません。事実上、定期預金と同じなら、資金運用として、銀行預けにした方がよいのではないでしょうか。

保険料の経理処理についてまとめておきます。

生命保険の経理処理.jpg

この表において「給与」であることは源泉所得税の対象であること、「資産計上」とは預金と同じことである、ことに注意してください。また、保険事故により法人が受け取る保険金は法人税の課税対象です。実質「手取り」は税負担分少ないこともお忘れなく。遺族が受け取る死亡保険金は相続税の課税対象です。

節税になる保険とは


尾瀬ヶ原ナンテン.jpg よく「節税になる」保険というものの相談を受けます。これは、保険契約としては長期平準定期保険のことで各保険会社で○○プランとかのニックネームで勧誘されています。

 某保険会社のリーフレットでは、その特徴として、

@    存命中の万一に備える死亡保険金

A    ご勇退に備える解約払戻金

B    保険料の一部は損金算入されます

と強調されています。

 財務省筋の指導なのでしょうか、節税効果は公には大きくうたわれていません。セールストークのなかで強力に付け加えられます。

 長期平準定期保険は、定期保険とはいうものの、その実質は保険の要素よりも節税商品といってよいでしょう。

 たとえば、某社のプランでは、契約者=法人、保険金受取人=法人、被保険者=社長等、契約時の被保険者の年齢40歳、保険期間60年(100歳まで)、年間保険料210万円、死亡保険金1億円、というもの。

 この保険料を払い続けるとして48年(88歳時)に累計支払保険料が1億円を超えてしまいます。70歳で役員を勇退してしまえば法人が保険をかける必要もなくなります。満期保険金もないため、実質、途中解約を予定したプランといえます。「保険料の一部は損金算入」というように、保険期間の6割(この場合36年間=76歳時まで)は保険料の半分づつを資産計上・損金算入するけれども、その中途解約払戻金は資産計上の累計よりも多いですよ、というのがミソです。税法(この場合は国税庁個別通達)は保険料の処理について簡便的な計算を認めているため、損金算入した金額のうちに資産分があることに節税効果があることがいえるわけです。解約払戻金はだいたい10年超の時期に払い戻す率が上がるように設計されているため、資金に余裕があれば10年間の運用として考えるか、さもなければ役員退職慰労金の原資と考えることが適当ではないかと思います。

 そのほか、簡保などで、養老保険の「2分の1資産計上」の扱いによって解約・満期払戻金が資産計上額より多くなるなどの節税商品があります。保険契約の際にはその中身や経理処理について税理士にぜひ相談してください。

生命保険料の経理処理をどうするか

 ところで、保険会社が言う「保険料は損金算入できます」ってどういうことでしょうか。そもそも「支払保険料」は勘定科目にもあるし、全額を「費用」で落としてかまわないんじゃないでしょうか。だいたい月々の保険料の経理処理を説明してくれる保険会社や勧誘員はいません。「簿記」の教科書にも説明がありません。

 法人で生命保険の契約をし、保険料を支払った場合、この経理処理はどうしたらいいのでしょうか。結論は「とりあえず全額『支払保険料』で落としましょう」ということです。よく「経理処理を税理士さんに相談したら、答えがたよりない」という声を聴きます。このケースもそうです。何となく「たよりなくなる」のは、
@ 生命保険の処理は契約書を見てみなければわからない
A 簿記会計と税務処理は違うことが多い
という事情があるからです。

 保険料である限り、いつでも自由に必要なだけ引き出せる「預金」ではありませんから「支払保険料」として処理してもまちがいではありません。

 しかし、生命保険契約は誰に保険をかけているのか、どういう事故で保険金が支払われるのか、保険金の受取人は誰かで、税務上の処理はかわります。

 つまり、日常・月々の簿記会計と税務上の処理は違うということです。普通、「会社の利益」に税率をかけて税金の計算をすると思われていますが、「会社の利益」金額と税率をかけるもとになる金額(課税所得)とはイコールではありません。税理士の仕事は「会社の利益」から「課税所得」を導き出すことです。税務上、費用に計上できることを「損金算入」と言います。「損金」というのは法人税法で使われる特殊な単語で、簿記会計の「費用」とほぼ同じ意味ですが、違う部分もあるということです。

 生命保険の場合、「支払保険料」の金額から税務上資産計上すべき部分を決算調整として、「保険積立金」などの資産勘定に振り替え、簿記会計と税務上の処理を合わせる調整が一般的です。ただし、あくまで税務上の調整にあわせて簿記会計で処理しているため、「保険積立金」の残高証明を保険会社が出してくれるわけでもありませんし、解約しても資産計上した金額がそのまま払い戻されるわけでもありません。しかも、会社で個々の契約ごとに「保険積立金」の計上額を把握しておかなければなりません。解約した際の差額が利益または損失になります。

 保険料はとりあえず「支払保険料」で処理しますが、決算処理で費用にならない部分について資産に振り替えることがあることを、あらかじめご了解ください。

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