有価証券報告書の虚偽記載・証券取引法違反の容疑で、堤義明氏が逮捕されました。先代・堤康次郎氏以来の西武王国の一族支配の崩壊は間違いありません。
戦前、経済界を支配した財閥、その基盤であった家父長制の残りかすを今の堤一族に見ることができます。康次郎氏が残した「家訓」「家憲」の時代錯誤。妻妾同居、母親の違う子供たちを一つ邸に住まわせ、家長たる同氏が君臨するという、現代では異様この上ない光景を想像するとぞっとします。康次郎氏は戦後、一時は公職追放となるものの、解除後は衆議院議長になるなど、世間には臆面もなく公私ともどもの独裁ぶりを発揮してきたといいます。
戦前の民法では家督相続がその基本とされてきました。戸主の地位を含めて嫡出長男にすべてを承継させるというものです。戦後、個人の尊重・男女の平等を基本理念に今日の相続制度となっていますが、堤家では家父長制と新民法(相続法)、会社経営を架空名義株で折り合いをつけようとしました。株取引のペーパーレス化を前に、このウソがばれそうになってトップの逮捕ということになりましたが、旧時代の亡霊の取り付かれて、これを早い時期に解決できなかった義明容疑者の不幸としか言いようがありません。日本の資本主義は、明治以来権力に支えられ、上からの資本主義として発展してきました。民間の資本も「政商」的に権力と癒着して増殖し、「財閥」として国を支配してきたのです。しかし、戦争の一端を担ったものとして、他の封建的なものとともに解体されました。これをかいくぐり、いまだに財閥的なにおいのする経済システムが残っていたことに驚くとともに、あのナベツネとともにプロ野球縮小を進めようとした堤氏が去り、一方の当事者であるホリエモンが、今また株の取引をめぐって脚光を浴びているのは、皮肉なタイミングではあります。これも会社支配の道具=株の争奪戦ですが、資本主義の活性力の得がたい魅力です。(2005.3)
堤氏は執行猶予付きの有罪判決を受けた。資本関係は持ち株会社の設立などにより整理された。ホリエモンは収監中である。(2012.7)