日本シリーズのさなかに村上ファンドが阪神電鉄の株買い付けをし、村上代表がタイガース株式の上場を提案して大騒ぎになりました。これが阪神のシリーズ敗退の原因の一つに挙げられているようです。また、プロ球界では、楽天が横浜ベイスターズのオーナー会社・TBSの株式の買い付けを始めて、これが野球協約違反ではないかとの批判が起こっています。株式を公開している以上、証券市場でだれが株を買ってもよいというものでしょうが、これが公共性の高い放送局や鉄道会社(球団)となれば、その利害は株主と経営者だけのものではありません。ファンや視聴者、ひいては広く国民的なものといっていいのではないでしょうか。改めて私企業の公共性というものを考えさせられました。
商法の改正により、株式がM&Aや会社組織再編の道具として利用されており、会社法の施行でさらにこの流れが推し進められます。中小企業では、その定款に「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を得なければならない」と定められているはずです。この規定が中小企業の「乗っ取り」を防止するかなめとなっています。注意したいのは「譲渡」とは売買とともに贈与も含まれていることです。
では、株式の譲渡に制限のある会社に株式に絡む問題はあり得ないでしょうか。配当することを常としている会社はともかく、日頃は「株主」さえ意識されていない社長も多いのではないでしょうか。社長=株主で、まずは安泰。発起人として名前を借りただけの人については、自分で資本金を出した事実も、その意識もなければ、実際におカネを出した人が株主でしょうが、株主が何者か確かめなければならないときが必ず来ます。経営権の承継(社長の交代)とは別に会社全体の円滑な承継は株式の問題を避けて通れません。これを機会に自社の株式というものを今一度考えてみてはいかがでしょうか。(2005.11)