会社の決算にどれだけの方が関心を持っているでしょうか。社長、役員、経理の係り、銀行、そして税務署。ごくごく限られた人たちではないでしょうか。衆目の批判にさらされない、それも専門的なものである、ということがこの仕事の落とし穴だと思います。実際は会社の事業に携わっているすべての人、得意先、仕入先、すべての関係者がこの情報にかかわっているはずなのに、肝心のところ、高みに立って全体像を見渡すことができるのは限られた人たちです。また、この仕事は一定の決まりごとの上に、日々一円の狂いの無いはずの、まったく閉じた世界です。生産現場、販売現場に足を踏み入れずとも、机上で計算書類が作れます。
「ニュース」づくりは、ひとつのモノづくりです。モノづくりをされている社長さんなら、欠陥のない間違いのないモノづくりのうえに、自分が作ったモノが市場や消費者から、どう評価されるのか、そのことに最大の関心があるはずです。私も以前、印刷会社に勤めていたころは、印刷物の企画、編集、印刷の一通りの仕事をしました。モノの出来や、顧客の反応、印刷媒体の反響に一喜一憂したものです。その経歴を買われて、この10有余年「ニュース」の担当をさせてもらっています。この小さな媒体にどれだけの方が関心を持っていただいているのでしょうか。毎月せいぜい3〜4本の記事、控えめな見出し、ただ流すだけの編集。作り手からすれば孤島から声を張り上げるような発行を感じることもありました。たまに記事を話題にしてくださる会員さんにお会いするとうれしいやら、恥ずかしいやら。あらためて間違いのない「ニュース」の発行を誓うのです。おおよそ「ニュース」の編集方針としては「中小企業経営者の立場に立った社会・経済に対する新たな視点を提供する」という趣旨のことを書いた記憶があります。世の風潮に流されて、この視点に曇りはなかったか、というと自信がありません。悪制度への我慢の押し付けに、結果的になっていないか、もっと言うべきこと、伝えなければならないことをしていないのではないか、という思いです。経理という保守的で、閉じた空間、少数の関与者のなかでの虚飾、空中楼閣、それに光さす「ニュース」でありたい、読んでみたら少し面白い、そういう「ニュース」でありたいのです。(2006.3)