今回は昨年の改正を踏まえて役員給与の取り扱いについて、やや詳しく押さえておきます。同族会社である中小企業を前提に検討します。役員給与として損金の額に算入される(費用になる)ものは、
① 月々の給与が定額である給与(「定期同額給与」)
② 事前に、決めた時期に確定した金額を支払う給与(①の定期同額給与を除く。「事前確定届出給与」)
−と、されました。
役員給与というものは、役員の生活費とはいうものの会社の利益調整に利用されることが考えられるため、税法上、事業年度中途での上げ下げ・臨時の給与は認められませんでした(退職給与を除く)。また、会社法施行前は役員賞与は会社の利益処分事項と考えられていました。法施行後、会計上は役員賞与は会社の費用とする取り扱いに変わりました。このため、法人税法と会計上の処理を一定調整する措置(上場企業に利益連動給与を認める)がとられました。
定期同額給与は、新事業年度開始後3か月以内に改定したもので、改定後の支給額が月々同額である給与です。たとえば、3月決算で6月に改定し7月からアップさせるとして4〜6月の給与が同じ、7月〜翌3月までの給与が同額であれば損金の額に算入されます。なお、以前認められていた4〜6月分と新給与の差額をまとめて7月に支給することは認められなくなっています。また、中途でのアップはもちろん、ダウンも原則認められません。
②の事前確定届出給与は所定の時期に確定額を支給する旨を税務署長に届け出たものです。その提出期限は、事業年度開始の日以後4か月以内または株主総会の日から1か月を経過する日のいずれか早い日とされています。この「確定額」は、これを増額することも減額することも認められません。支給額が違った場合には全額が損金の額に算入されません。また「所定の時期」に支給されなかったものも同様です。つまり未払金経理も認められません。
また、注意すべきは「役員」の範囲です。とくに「使用人兼務役員」として従業員と同様の仕事に従事している取締役など(代表取締役・専務・監査役等を除く)は、使用人分の給与は従来通り費用となります。しかし、会社の持ち株割合が主要な株主グループに属する人でその人(配偶者を含む)が5%超持っている場合は使用人兼務役員となりません。また、支給時期が他の従業員と異なる場合には、支給された賞与は費用となりませんので、ご注意ください。
身内の給与はあいまいになりがちです。立場をはっきりさせ、手続きはしっかりしておきたいものです。(2007.5)