退職給与は退職を起因として支給される一切の給与とされています。しかし、次のように役員としての地位が激変した場合には、その際に「退職」とみなして、退職給与の支給が税法上認められています。(基本通達9-2-32)
① 常勤役員が非常勤役員になったこと
② 取締役が監査役になったこと
③ 分掌変更後における、その役員の給与が激減(50%以上の減少)したこと
以上のいずれかの事実があり、かつ、退職金を支給したときは、退職給与としての相当額は、その支給日の属する事業年度の損金の額に算入されます。なお、未払い経理の場合は、実際支給されるまで損金とされないので注意してください。また、実際に退職(死亡退職を含む)した場合でも、支給額が具体的に確定した日の属する事業年度の損金の額に算入されます(未払い経理も可。「ただし、支払った日の属する事業年度において損金経理をした場合には、これを認める。」基本通達9-2-28)。この「確定した日」は「株主総会による支給決議の日」となります。
では、「退職給与とそ手の相当額」とは、どのくらいの額でしょうか。法人税法では「従事した期間、退職の事情、〜(類似法人の)支給の状態等に照らし、〜退職給与としての相当金額を超える場合」には、その超える部分の金額は損金の額に算入しないとしています。一般には次の算式で「相当額」が計算されているようです。
役員退職給与=最終報酬月額×在任年数×功績倍率
ある税務訴訟で税務署長が管内の法人の役員退職給与の「平均功績倍率」を「3.9」として上記の計算金額を超える部分を損金不算入とする「更正」を是認する判例があります(「租税判例百選」有斐閣)。また、功績倍率が「3倍」を超えると否認される確率が高いとする指摘もあります(「役員給与をめぐる税務と会計」鈴木基文、清文社)。(2007.12)