ドイツの環境政策と大阪市大

 ぐっと腹に落ちる話を聞きました。原発ゼロへ舵を切ったドイツ、世界でも先進的な環境政策と経済成長の両立に踏み出しています。その原点が日本にある!福島の原発事故もそうですが、大本はベルリン社会科学研究センターのヘルムート・ワイトナー博士が日本の70年代の反公害の運動と対策を学んで出した提言であり、これがドイツの温暖化対策の基本理念になったというのです。

 当時の日本は、公害反対運動が燃えひろがり、大阪では1971年4月、「公害知事さん、さようなら。憲法知事さん、こんにちは」を合言葉に、大阪市大法学部の黒田了一教授(憲法)が知事に当選しました。大企業に規制を迫り、自動車メーカーに低公害車は技術的に可能だとつきつけて、最高レベルの排ガス規制を実現させました。

 ワイトナー博士「企業は規制によって短期的には苦しむことがあっても、長期的には技術革新を生み出し、世界に新しい市場を築きます。つまり先進的な環境政策と経済成長は両立できるのです。そのことを私たちドイツは日本から学びとったのです」(2008年6月1日NHKスペシャル「低炭素社会に踏み出せるか 問われる日本の進路」)。

 博士は、政府の委託で研究しており、国の経済発展を重視しています。「規制による市場創造です。資本家はグリーンだろうがブラックだろうが儲かればよいのです。そして、環境で儲かると知りました。環境産業というイメージで輸出できます」。ジーメンスが原発から撤退したのも、原子力産業というメージが悪いから。グリーン産業は50万以上の雇用を生み、自動車や他の産業より成長が高く、将来性があり、全世界が環境技術を必要としている、といっています。ドイツは、「環境保護」の旗印で、世界政治と経済で尊敬され強力な地歩を築いていく構えにゆらぎがありません。

 日本について博士は「いまやドイツがよくなり、日本は遅れている」といっています。ちょっとショックだけれど、さもありなん。日本では「規制反対!」の声が大きく、依然として「新自由主義の旗」が翻ったまま。それどころか大阪では、そのバックアップ勢力まで現れてきた。まさに日本の進路が問われている。


 ワイトナー博士は70年代から日本に留学し、反公害の運動と対策を「都留重人、宮本憲一、柴田徳衛教授のもとで学んだ」といいます。この顔ぶれをみて思いました。都留教授は三商大の一つ一橋大、柴田教授は都立大、そして宮本教授は私たち大阪市大の教授でした。公害は住民の命とくらしに直結する問題であり、地方自治体が住民の立場に立つかどうかは大きな意味を持ちました。自治体や地域住民と近い公立大学が、その役割を立派に果たした歴史的業績ではないでしょうか。

 そして、その成果は人びとの生活・くらしを出発点としていた以上、将来につながる普遍的価値をもち、経済危機や災害の多発する現代社会ではよりその価値を発揮することになると思います。大きな出番がまた来たのではないか!
そのときに「先端研究は国立大に任せればよい。人材を集め養成する大学へ」などと主張する人がいるが、ピント外れもいいところです。


 ワイトナー博士は、ドイツの大事な変化として環境部門の官僚(公務員)が新しくなったことをあげています。かつて役人は、偉そうで、権威主義的で、将軍のようだったが、いまドイツの政治・行政システムは、より開放的になり、国民とNGOに開かれていると。これが環境保護政策を推進するうえで、大事なポイントの一つだと語っています。

 この点で気になるのは、大阪市大の行く末に大きな権限を行使している橋下市長は、真逆の立場だということです。いわく「市職員は市民に命令する立場です」「職員は市民の顔色でなく、市長の顔色をみて仕事をするのが当然だ」「職員が民意を語ることは許しません」等々。市長の言うことに無条件に従い、顔色を見るしか許さない時代錯誤の言動です。これがまかり通るなら、大阪は、身も心も思考も委縮して、大阪らしい革新的、批判的精神の発揮、市民の創意工夫を大事にする気風が窒息してしまいます。

(筒井 正)

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