死なない法人に生命保険は必要でしょうか

 「法人で生命保険の契約を勧められたんですが」という相談には、私は「法人は死にません」と答えます。死ぬのは人間だけです。社長や役員・従業員が死ぬわけで、その死亡について法人がどのようなリスクを負い、どう保険で補てんするかという問題です。生命保険契約は、契約者でかつ保険料の負担は法人(会社)、保険金の受け取りも法人という契約です。生命保険の加入にあたっては、いつも法人がこうむる損害(リスク)についての検討が足らないのではないかと思うのです。法人ではない被災者等にたいしてその損失を直接補うものではないのです。

 保険契約者・保険金受取人ともに法人であることを前提として述べます。

 たとえば社長が亡くなったとき、法人にとってどのようなリスクが降りかかってくるでしょうか。@会社の信用が落ちるA会社の営業力が落ちるB死亡退職金を支払わなければならない、とかいうことです。ここでよくある勘違いは、保険金の受け取りは法人であることです。この時点では全額法人税の課税対象です。火災保険のように、圧縮記帳によって課税を繰り延べることはできません。その後の信用や営業力を引き続いて補てんするものではないのです。

 つぎに「死亡退職金の支払い」は確かに大きなリスクです。しかし、これとて同族会社の事業を引き継ぐ遺族に支払われるわけから、その時点で調整はつくはずです。保険金が当然に即退職金になるわけでもなく、もし、退職金の支払いの確定が遅れて、保険金の受け取りの事業年度の翌年度以降になると課税されてしまい、支払いの原資としては目減りしてしまうことが考えられます。

 以上は定期保険(掛け捨て保険)の例ですが、養老保険の場合、被保険者(役員・従業員)が死亡しても生きていても(満期になっても)、保険金が支払われますから「預金」と同じ扱いになります。経理処理は支払全額が資産計上です。経費とはなりません。満期保険金は保険料支払総額よりも少なくなることは覚悟しなくてはなりません。

 このように死亡退職金の支払いに充てるために保険契約することに最大のメリットがあると私は考えています。現在の制度では役員退職金の各年の引き当ては経費として認められていないため、この点で保険契約は有意義だと思います。

 また、がん保険・医療保険(その基本は満期保険金の支払いのない定期保険です)の受取人が法人となっている場合に入院給付金等の受け取り相当額を被保険者に支払いたい、とよく相談を受けますが、給与・賞与の支払いの扱いを受けますので、注意が必要です。欠勤中の給与を支払っていれば、それで十分法人はリスクを背負っています。受取人を被保険者とする契約も可能ですが、従業員・役員全員を被保険者とする必要があります。役員だけを被保険者とする契約は役員給与として源泉所得税の課税の対象になります。ここでも、保険契約が何のリスクを補償するものであるのかをよく考える必要があります。役員・従業員への福利厚生目的なのか、会社経営上のリスクを減らすためなのか、ということです。

 このように法人契約の生命保険の活用は保険本来の役割から見ると限定的だと言えそうです。金融商品と見た場合、低金利の時代で資金に余裕のない中小企業にとってメリットがあるものとは思えません。

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