私は市大・府大統合に反対です。大学は単に入試の偏差値だけで判断されるべきではないと考えています。より重要なことは、その大学の研究活動の実績やレベルで評価されるべきだと思います。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞されたiPS細胞の山中伸弥先生は7年間、大阪市大で研究しておられました。また、昨今話題の引力のヒッグス粒子の概念が生まれるきっかけとなった論文を発表され、2008年にノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎先生は若き頃、教授として市大に在籍しておられました。お二人が超ビックな世界的研究者であるということに異論を挟む人は誰もいないでしょう。(A)

私が学生として大阪市大(工学系)に在籍していたときに、同じ研究室に在籍していて、その後、大学の研究者となった人が3人いましたが、後に、それぞれが日本のトップレベルの大学(旧帝大、国立大)の教授や助教授(今の准教授)になりました。3人とも、今は定年退職していますが大阪市大の研究レベルの高さが広く認められている証左であると思います。
因みに学生のレベルに関する話題として、私が大阪市大に在籍していた頃、某工学科の学生の中で7人が国家公務員試験を受け、6人が甲種(今の上級職)に合格し(それも上位で)、一人だけは1ランク下の乙種に合格しました。翌年には1位で合格した人がいました。
実業界関係の話題として、今、政府の産業競争力会議のメンバーでアベノミクスの一翼を担っておられる坂根正弘元コマツ社長は工学部機械工学科卒です。氏は、創業以来の業績不振に陥った時に社長に就任し、短期間でコマツをV字回復させました。
読まれた方もおられるかとは思いますが、『週刊ダイヤモンド』9月29日号(2012年)、全国560大学総合ランキングで、大阪市大は10位(医大・単科大を除く)で、13位の神大より上です。医大・単科大も入れると22位(神大37位)で、他方、府大は74位です。
経済的に効率的だ、という理由だけで市大と府大を統合する、ということは、言い換えれば、大学教員の人事が研究実績以外の要素で有無を言わさず決められるという、国公立の大学では有り得ない人事が行われる事に他なりません。統合は、自由な雰囲気の中で長い間に培われてきた高い評価を目指して優秀な学生や研究者が集まり、その人達がまた、大阪市大の評価を高めてきた、という良いサイクルをぶち壊す蛮行であり、せっかくの貴重な大阪の宝である大阪市大の価値を下げる以外に何の意味もありません。(A)