大阪府・市が公表した「新大学ビジョン(案)」について卒業生・府民の立場から意見表明したい。以下、ビジョンの考え方について意見を述べたい。
① 府・市大学の存在意義を認めながら「統合」に収れんさせようとする議論が理解できない。その動機が「知的インフラ拠点」「大阪の成長戦略」「世界的な大学間競争に勝ちぬく」「強い大阪」という文言にみられるように、特定の「成長戦略」に大学を奉仕させようとする欲求を感じさせるものである。「折しも、府・市統合の議論がなされており、この機に…」とあけすけに述べられているように、「都構想」を前提に府市大学の当事者不在の統合とはいかがなものか。また、府市統合本部の主要メンバーがまとめた「新大学構想(案)」に述べられていたいわゆる「2重行政批判」的な部分(府・市の財政が逼迫する中で、それぞれに100億円以上の税金を…投入することの意味は改めて厳しく問い直されねばならない。<構想(案)>)という議論が成り立たないことを自ら認めているのではないか。「統合」によって、「新大学」にいくらの税金が投入されることになり、うち府市(都?)の負担はいくらになるのか。そのうえ、「スケールメリット」とか「シナジー効果」とか想像でしかない効果を言い立てるのはどうか。両大学のこれまでの伝統・実績を生かし、「競争に勝ち抜く」のではなく、互いに刺激し合い発展しあうことこそが「学問」というものではないのだろうか。
② 大学運営について理事長・学長の「ガバナンス強化」について懸念を指摘する。新大学構想(案)では府大におけるガバナンス改革を紹介しているが、この延長上に統合があるとすれば、従来の教授会に重きを置いた大学運営ではなくなるようである。学外からの登用もうたっている。橋下市長も幾度か市大の教授会による運営を批判する発言を続けてきた。新大学構想会議も学外者が主導してきた。理事長・学長が大学関係者の総意のもとに、大学を運営するうえで重要であることはまちがいない。しかし、「新大学」での理事長・学長というものは人事と予算を牛耳る絶大な権力をもつもののようである。国からの交付金が削減されてきているもとでも、大学の教育・研究環境の改善や研究の自由、大学の自治をまもる「ガバナンス」こそが必要ではないのか。
以上、疑問点のいくつかを述べさせてもらった。「構想」「ビジョン」に流れる考え方には、大学人に対する不信があるように思える。府・市大学の関係者による深い広い論議を、時間をかけて行ってほしい。(2013.6.19)