橋下市長は、市大・府大の統合は「大学のガバナンス改革の先取り」と位置づけ、教授会が大学運営に関与することを不当であるかのように敵視してきました。教授会の権限を縮小し、無力化する学校教育法の「改正」案は、安倍政権の大学の自治破壊のさきがけを、橋下市長が率先して担おうとしてきたことの証左です。
西谷・市大名誉教授ら11氏が緊急アピールを発表しました。
<大学の自治を否定する学校教育法改正に反対する緊急アピール>
日本の大学と民主主義は、いま重大な危機にさらされています。

政府・文部科学省は、教授会が審議する事項を学位授与や教育課程の編成等に限定し、教育研究と不可分な人事・予算等を審議させないことで、学長の権限を抜本的に強化するという学校教育法改正法案を今通常国会で成立させるとしています。教職員による学長選挙を否定し、学部長さえも学長の指名にすることを射程に置いています。
大学は、その歴史を通じて、国家や権力を持った勢力による統制や干渉から学問の自由を守るために大学の自治を確立してきました。大学の自治は、自由で民主的な市民を育成するという大学の使命を果たすために不可欠です。わが国においては、憲法23条が学問の自由を保障し、学校教育法は国公私立大学の別なく「重要な事項を審議するため」に教授会を置くことを定め、教授会を基盤とした大学自治の法的枠組みが整備されています。人事と予算に関する教授会の審議権はその最も重要な制度的保障であり、これを否定する学校教育法の改正は、大学の歴史と大学の普遍的使命に照らして到底認められない暴挙です。
安倍政権は、財界のグローバル戦略を大学に押しつけ、大学を政府・財界の意向に従属させるための大学破壊を強引に推し進めています。今回の学校教育法改正法案は、教育委員会制度の解体、道徳教育の教科化等と並び、戦後、国民が培ってきた民主的な教育の否定を意図するものです。
学校教育法改正は、学問の自由と大学の自治を侵害し、国民のための大学を国家目的に奉仕する機関へと変質させるものにほかなりません。人類的課題が山積する困難な時代であればこそ、学術と大学の自由で多様な発展が必要です。私たちは学校教育法改正に反対し、国会で徹底審議のうえ廃案とすることを強く求めます。
2014年4月7日
学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会
【呼びかけ人】(五十音順)
芦田 文夫(立命館大学元副総長)
池内 了 (名古屋大学名誉教授)
内田 樹 (神戸女学院大学名誉教授)
尾池 和夫(京都造形芸術大学学長)
大橋 英五(立教大学元総長)
今野 順夫(福島大学元学長)
西谷 敏 (大阪市立大学名誉教授)
広渡 清吾(専修大学教授、東京大学元副学長)
松田 正久(愛知教育大学前学長)
森永 卓郎(獨協大学教授)
矢原 徹一(九州大学大学院教授)
この緊急アピールに賛同し、署名される方は→https://business.form-mailer.jp/fms/dc0ab1ea31301
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■学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案について(概要)
趣旨
大学運営における学長のリーダーシップの確立等のガバナンス改革を促進するため、副学長・教授会等の職や組織の規定を見直すとともに、国立大学法人の学長選考の透明化等を図るための措置を講ずる。
概要
1.学校教育法の改正
<副学長の職務について>第92条第4項関係
・副学長は、学長を助け、命を受けて校務をつかさどることとする
<教授会の役割について>第93条関係
・教授会は、学長が教育研究に関する重要な事項について決定を行うに当たり意見を述べることとする
・教授会は、学長及び学部長等がつかさどる教育研究に関する事項について審議し、及び学長及び学部長等の求めに応じ、意見を述べることができることとする
2.国立大学法人法の改正
<学長選考の基準・結果等の公表について>第12条関係
・学長選考会議は学長選考の基準を定めることとする
・国立大学法人は、学長選考の基準、学長選考の結果その他文部科学省令で定める事項を、遅滞なく公表しなければならないこととする
<経営協議会>第20条第3項、第27条第3項関係
・国立大学法人等の経営協議会の委員の過半数を学外委員とする
<教育研究評議会>第21条第3項関係
・国立大学法人の教育研究評議会について、教育研究に関する校務をつかさどる副学長を評議員とする
<その他>附則関係
・新法の施行の状況、国立大学法人を取り巻く社会経済情勢の変化等を勘案し、学長選考会議の構成その他国立大学法人の組織及び運営に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずる
施行期日 平成27年4月1日
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案 新旧対照表は→こちら