××税務署から電話。「先生が提出された○○さんの『更正の請求』の件ですが」――
やっと連絡が来たか。しかし待てよ、あんなに簡単明瞭な件に電話で問い合わせとは、どういうことだ。
私は、ある高齢の女性の所得税の申告を2年お手伝いしていました。当初引き受けたときは、不動産所得と年金だけと思っていましたが、銀行口座を見ていくうちに1年目には気づかなかった配当所得があることに気づき、2年目にはこれを加えて申告書を作りました。配当所得は上場株式や一銘柄年10万円以下の収入なら申告不要とすることもできますが、この場合はそれには当てはまらないものでした。市役所でその年の所得証明をとってみるとしっかり配当所得の記載もありました。配当所得には配当控除もあり、本来の総合課税でちゃんと申告すれば税金の過払いであったことは明らかです。配当金から天引き(源泉徴収)されていた税金が返ってくるはずです。
1年目の申告について所得税の減額請求=「更正の請求」書を提出しました。ちなみに申告が漏れていたという増額の申告は「修正申告」といいます。どちらの申告も5年さかのぼってすることができます。
さて、税務署の電話氏は「更正の請求には証拠を付けなければならない。ついては支払調書を送ってくれ」というのです。「支払調書」とは配当を支払う会社が税務署に提出する書類で、支払先ごとに天引きした金額を書いたものです。税務署に提出されたはずの書類を納税者に求める不思議。現に市役所では税務署の資料を基に住民税を課税しているのです。請求から2カ月近くを経ての連絡です。この間何も調べもせず、当然のように納税者に要求する筋のものではない旨を強く言い渡しました。電話氏は「何か不都合ですかね」と最後まで得心できない様子でしたが。
結果、税務署から請求通り還付する旨の通知が2週間後に到着しました。
納税者の権利を守る、というのも結構大変です。納税者の無理解に悩まされることも多い。以前は「無料相談」を利用していたこのクライアントは、私が関与するメリットをどこまで理解してくれているか不明です。しっかり手数料を値切られたりして。(2014.8.4)