私は、関与先納税者の滞納税金の差押処分に対して行政不服審査法に基づく審査請求を大阪市に求めていましたが、請求が棄却されました。その理由は、滞納税額が完納されたため差押えが解除され、訴えの利益がないこととなったためです。しかし、不動産が差し押さえられた事実は登記事項証明書にも今後も記載されることになります。

このため、予定されていた行政不服審査会での口頭意見陳述が中止された際に、この不利益はなお残る旨を市当局に電話で訴えましたが、容れられませんでした。

この口頭意見陳述のために私が用意した内容(一部)をご紹介します。

事実関係について

(中略)

・・・市税当局と納税者との橋渡しができる税理士の関与が明らかになったにもかかわらず、「仲本税理士は、・・納税に関する権限の委任をされていないため、・・具体的なお話はできません」とはどういうことでしょうか。顧問先に送られた文書について具体的に問い合わせている税理士に税務代理権を疑うどんな理由があるというのでしょうか。昨年8月にこの審査請求書を提出する直前にS市税事務所から償却資産に係る固定資産税の納付について私に協力を依頼する電話がありました。これもAさんにかかわる督促でした。私にとってはこの審査請求を起こす直接の動機となったことがらでした。このように自己に都合のいいように税理士を使う市税当局の姿勢はあらためていただきたいと思います。

差押えの不当性について

K市税事務所・審理員意見書は国税徴収法第41条が「滞納者の財産を差し押さえなければならない」とあるから「要件を満たしている」、「文理解釈により解釈すべき」といいます。

それに対して私は「差押えることができる」旨の解釈が妥当と考えます。なぜならば実務においては滞納処分により強制的に納付させるより納税者にすすんで納税してもらうほうが望ましいことは論を待ちません。差押えという手段は間接的に納付を促す手段と考えられます。

また、「差押えなければならない」という規定は明治憲法下の国税滞納処分法が引き継がれていますが、現行の国税徴収法の制定にあたり、当時の租税徴収制度調査会の会長我妻栄氏は以下のように述べて、権力の乱用をいましめていることに注意を促したいと思います。

「国税徴収法精解」(大蔵財務協会)序文より

「租税債権については、優先的効力の範囲にも、その用いうる強制力の程度にも、徴税当局の認定と裁量に委されている幅が相当に広い。このことは、単に近代私法取引制度に対する例外であるだけでなく、近代法治国家の公権力の作用としても、異例に属する。にもかかわらず調査会がこれを承認したのは、納税義務者の態度の如何によってはかような制度を必要とする場合もあることを認めたからである。いいかえれば、これらの優先的効力の主張も、強制力の実施も、真に止むを得ない場合の最後の手段としてはこれを是認せざるを得ないと考えたからである。従ってまた、徴税当局がこれらの制度の運用に当たっては慎重の上にも慎重を期することが、当然の前提として諒解されているのである。(中略)徴税事務の第一線に働く人々が、万一にも、調査会の到達した結論だけを理解して、そこに到達するまでに戦わされた議論と費やされた配慮のもつ意義を知ることを怠るようなことがあっては、調査会の三年にわたる苦労は生命を失うことになる。よく切れる刀を持つ者が必要以上に切らないように自制することは、すこぶる困難である。不必要に切ってみたい誘惑さえ感ずるものである。本書がこれを戒めるためにも役に立つことを希望してやまない。」

私は、今回の差押えについて超過差押えあるいは無益な差押えではないかと訴え、K市税事務所に具体的に差し押さえた不動産についての評価額を明らかにするように求めました。しかし、2度の弁明には「およその処分予定価格」と述べるのみで、金額の表明はなく、審理員意見書で、はじめて「××00万円程度」という表明がありました。この経過は、差押えに当たって、まず無益な差押えになるのではないかという検討が市税事務所においてあったのか非常に疑わしいと考えます。

市税事務所・審理官意見書は、今回の差押えは国税徴収法基本通達によれば「超過差押えであっても不動産などの不可分物については違法ではない」旨を主張しています。私は、「基本通達」が担当官署を縛るものではあっても納税者を直接縛る規範ではないと考えます。この批判に対して、市税事務所・審理官意見書は裁判判例をもって基本通達の取り扱いが認められたものであるといいます。「地裁判決と同主旨のものであると認められる」から私の主張に理由がないという論難は、当局が「基本通達」をタテに主張しながら後付けに判例で補強したに過ぎないのに、論理が逆立ちしています。今回の申し立ての議論の推移をみても「まず基本通達ありき」という態度が見られます。

審理員意見書における評価でも抵当権を控除した処分価格(××00万円余)と滞納額××万円との乖離は甚だしく、不可分物であるとの理由で差し押さえの対象とすることは常識を逸脱していると考えます。今回の差押えにより、納税者はちょうど申し込んでいた融資を断られ、新たな事業展開を断念することを余儀なくされました。信用の回復には今後おおきな努力を強いられることになります。

最後に

今回の事態は、税務の専門家たるべき市税事務所が、税務の素人である納税者に対して説明を尽くすこともなく、マイホームを差し押さえるという暴挙であります。一市民である納税者と市税事務所との税務に対する認識・力の隔たりもさることながら、市税事務所の課税部門と収納部門との税務についての認識の隔たりも、私には感じられました。

昨年8月に審査請求書を提出した際に、対応した職員は法人と個人の区別、給与所得と事業所得の区別もわきまえていませんでした。市税職員の不勉強も差押えに至った原因であると考えます。もっと納税者の立場をおもんばかった対応があったはずです。

もとより適正な納税は国民・市民の義務であり権利です。当局の文書には「違法ではない」「不当ではない」という語句が繰り返されますが、我妻先生の言葉をもう一度胸に刻んで、くれぐれも「差押えありき」の税務行政とならないようお願いいたします。

税理士は申告納税制度の理念にそって納税者の信頼にこたえなければなりません。税務行政の補完物として取り扱わないように合わせてお願いいたします。

Aさんの府・市民税は完納されたはずです。速やかな差押え解除をお願いします。

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