
4月4日、当「考える会」の4人は、大阪市あべのメデイックス6階に新設されたばかりの新法人設立準備室をたずね、荒川理事長兼学長宛の「『安全保障技術研究』応募に抗議するとともに、直ちに中止を求めます」と題する「抗議・要請書」を手渡してきました。新法人設立準備室の課長、課長代理が対応。「防衛省委託研究への応募を直ちに中止すること、また、応募に至った経過とその是非について、今後の対応について、大学執行部の責任ある回答を求める」という要請事項について、4月中に回答すると応じてくれました。(2017.4.4)
荒川学長名の回答は→こちら
「軍学共同いらない!市民と科学者のつどい」→チラシ
抗議・要請書 2017年4月4日
大阪市立大学
理事長兼学長 荒川哲男様
大阪市立大学の統合問題を考える会
「安全保障技術研究」応募に抗議するとともに、直ちに中止を求めます
私たちは、「維新」府市政が偽りの「二重行政」論で府大・市大「統合」を持ち出してきたとき、すでに運営交付金を大幅に削減された両大学のさらなる経費削減、リストラ・合理化ではないか、また「ガバナンス改革」と称した学長選廃止など大学の自治・自由を奪う動きに懸念を抱いてきました。
今回、「軍学共同研究に加担しない」と宣言する大学が相次ぐなか、あろうことか大阪市大が2016年度の防衛装備庁の委託研究「安全保障技術研究推進制度」(最大年3900万円が最大3年支給される)に応募し、採択された(16年7月29日、防衛省発表)ことに、私たちは大きな衝撃を受けています。
この防衛装備庁の委託研究への応募(採択)と並行して、昨年8月に副首都推進本部会議が発表した「新大学ビジョン」で「都市シンクタンク」と「技術インキュベーション」の2つの機能の強化=産官学連携の強化を打ち出したことは偶然だったのでしょうか。3月13日の大阪市会・都市経済委員会での小川陽太市議(日本共産党)の質問に対して、森山大学支援担当課長は「市大では、充実した研究活動のため、文科省の研究費補助金や委託研究費など、国や民間企業からの外部資金獲得に積極的にとりくんでおり、その中で、この制度(防衛省委託研究)への申請を行った」と答弁しました。この10年間で運営費交付金を約40億円も減額された大阪市大が、外部資金の獲得のために、産学連携強化から軍学連携にまで踏み出したのでしょうか。
このたびの防衛装備庁の委託研究応募は、大阪市大の教育研究の健全な発展にとって、重大な禍根となりませんか。科学者の国会といわれる日本学術会議は、3月24日の幹事会で、「軍事目的のための科学研究を行わない」という50年・67年「声明」を継承する「軍事的安全保障研究に関する声明」を決定しました。「声明」は、「科学者コミュニティが追求すべきは、何よりも学術の健全な発展であり、それを通じて社会からの負託に応えることである」「防衛装備庁の『安全保障技術研究推進制度』では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い」「学術の健全な発展という見地から、必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である」と述べています。私たちは、日本学術会議の「声明」を重く受けとめます。
さらに、大阪市大の卒業生や関係者は、戦前の学問研究の自由の閉塞状況にあって「滝川事件」や「大阪商大事件」を経験し、戦後の大阪市大の出発においてこれら事件の犠牲者が名誉回復され、大学の民主的改革が行われ、今日の大阪市立大学の礎となった歴史と伝統を忘れるわけにはいきません。
私たちは、大阪市大が防衛省の委託研究に応募したことに対して厳しく抗議するとともに、直ちに中止することを求めます。また、応募に至った経過とその是非について、そして今後の対応について、大学執行部の責任ある回答を求めるものです。
以上