大阪市立大学の統合を考える会は大阪府立大学問題を考える会と以下の声明を共同で発表しました。
科学技術は平和と民生のためにこそ活かすべき
―大阪市立大学の「軍事研究」に反対ですー
わたしたち両「考える会」は、大阪府立大学と大阪市立大学の統合問題について、「二重行政」論の偽りや、「統合によるスケールメリットを生かす」というがその実質は“リストラ”ではないか、と「新大学」構想を批判してきました。現在、副首都推進本部会議で議論されている「新大学」は、「大学間競争に打ち勝つ」「新たなイノベーションの創出」を掲げていますが、予算やキャンパスなど肝心の問題で具体化がなく、高等教育研究機関にふさわしい公立大学の姿・形がみえません。
わたしたちは、国立大学と比べても極端に削減されている両大学の運営費交付金の実態(法人化以降、削減され続け、2016年度の運営費交付金は府大で05年比75・7%、市大で06年比71・7%に)や、「ガバナンス改革」と称して学長選挙を廃止するなど、自由な学問研究の基礎となる大学の自治が形骸化されていくことに大きな懸念を抱いてきました。そのうえ、大阪市大が防衛装備庁の2016年度「安全保障技術研究推進制度」に応募、採択されたことに驚き、心を痛めています。
この「推進制度」は軍学共同をすすめる政府方針にもとづき、2015年に3億円を拠出して始まり、翌16年は6億円に、17年度は110億円が予算化され、急激に拡大しています。法人化された国立大学の運営費交付金は毎年減額(そのうえ傾斜配分)され、「外部資金の獲得」で埋め合わせることが迫られているもとで、研究資金の提供で大学を軍事研究に取り込むことがねらいです。「民生技術と防衛技術のボーダレス化」「成果の公開を原則」(防衛装備庁)などといくら強調しても、防衛省の委託研究制度は科学技術の軍事利用が目的です。
科学者の国会といわれる日本学術会議は3月24日、過去2度(50年・67年)の「軍事目的のための科学研究を行わない」との決議を継承する声明を発表しました。声明は、「防衛装備庁の『安全保障技術研究推進制度』では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い」「むしろ必要なのは、科学者の自主性・自律性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である」「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を技術的・倫理的に審査する制度を設けるべき」と提言しています。わたしたちは日本学術会議声明を重く受け止めます。
さらに、大阪市大の卒業生ら関係者は、戦前の学問研究の自由の閉塞状況にあって「滝川事件」や「大阪商大事件」を経験し、戦後の大阪市大の出発においてこれらの事件の犠牲者が名誉回復されたうえで、今日の市大の礎となったことを忘れるわけにはいきません。また、府立大学関係者は、府立大学も「軍事研究」を容認するのではないか、と憂慮しています。
わたしたちは、大学の教育・研究を歪め、平和、自由と民主主義の歴史と伝統を汚し、日本学術会議声明にも背く「軍事研究」に反対であり、この立場から大阪市大に対して「安全保障技術研究推進制度」への応募を中止すること、両大学に対して、今後とも「軍事研究」を行わないよう、大学における研究の適切性を技術的・倫理的に審査する制度について検討されますよう求めます。
わたしたちは、科学技術は何よりも平和と民生のために活かしてほしいと願い、大阪府・市に対して両大学の自治の尊重と大学予算の充実を求めます。大学から「軍事研究」をなくするために、府民・市民と科学者・大学人の連帯を呼びかけます。
2017年5月13日 大阪府立大学問題を考える会
大阪市立大学の統合問題を考える会