7月28日に開かれた「統合問題を考える学習」で仲本世話人が行った「活動報告と提案」を紹介します。
1)府大・市大の両考える会が、このI-siteなんばで府立大学名誉教授の小林宏至先生と立命館大学教授の森裕之先生を講師に「統合問題を考える講演会」を開催したのが、4年前、2014年5月18日のことでした。前年2013年11月の大阪市会での「統合議案」の否決をうけて「府大・市大の拙速な統合はやめてください」という署名運動に取組む最中での講演会でした。2014年9月にはそれぞれ1万筆を超える署名を府知事・大阪市長に提出、議会各会派へも要請しました。そして、翌15年5月の大阪市住民投票で「都構想」は否決されたのです。このとき、大学「統合」は断念されるべきでした。ところが、11月の知事・市長ダブル選挙で維新が巻き返し、「統合」問題が再浮上するという経過をたどりました。
市会で否決された「統合」は、それまで橋下市長が上から強引に進めてきた方向性から、「両大学が主体的に検討」という体裁に変更して、議会での承認が企まれてきました。しかし、その実態は、上山信一特別顧問をはじめ、維新首長の後押しを受けた両大学の学長らが主導する「統合」計画であることはあきらかです。私たちは、16年9月に学習会を開催し、桜田照雄阪南大教授の講演をパンフレットにして、私たちの望む大学像を提案しました。
2)昨年、2017年9月の府・市議会に両大学の「法人統合」議案が提出され、ひとつの山場を迎えました。この時、私たちは大阪市議会に「法人統合の中止を求める陳情」書を提出し、知事・市長と両議会への要請を行いました。大阪市議会では、新大学のキャンパス問題や予算問題で、自民・公明両党が保留、共産党が「内発的な統合ではない」という理由で反対したため、いったんは可決の見通しが立たない状況が生まれました。一方、11月2日の府議会で、自民党が「1法人・2大学が最善」と賛成にまわり、維新・公明・自民の賛成で「法人統合」議案が可決してしまいます。この時、大阪市会ではまだ「統合」に慎重な意見が多数を占め、継続扱いで2018年を迎えました。
ところが、18年2月市議会で、公明党がキャンパス問題や財源問題で市長にすり寄る質問を行い、「森之宮に新キャンパスを検討」という唐突な市長答弁を受けて、一転、公明が賛成にまわり「法人統合」議案を可決させてしまいました。この時、自民・共産の2党が反対の討論をしましたが、何の裏付けもない思い付きともいえる「提案」によって、大学という知の伝統を危うくする行為は絶対に許せません。
3)こうして、2019年4月に「公立大学法人大阪」が新しく発足することになります。この新「公立大学法人」設立は、「新大学への移行をより円滑にすすめるため、まず法人統合を実現し、その後大学統合をめざす」という方針であり、知事・市長が任命する新理事長が「ガバナンスの強化を図り、選択と集中の視点から構造的な改革及び資源の効果的な活用を行えるよう、経営を一元化する」と明記しており、大学の自治を踏みにじり、反対の声を押さえつけ、“大学リストラ”を本格的に進める企てです。
維新府市政によれば、市大・府大の「統合」計画は、2019年4月新法人設立、2022年4月新大学発足となっており、2020年2月の府市議会で「大学統合関連議案」を審議、さらに2021年9月に「定款変更の統合議案」を審議、文科省、総務省の承認などが予定されていますが、計画通りに進む保障はありません。大学関係者から「あと1年で、両大学の法人運営を一本化するのは難しい、新法人が発足しても実態はいまのままではないか」という声すら聞こえてきます。新大学にむけたキャンパス問題や予算問題もこれからの検討であり、実際に、学部や学科の統廃合の具体化検討がすすめば、両大学間、大学関係者間に新たな矛盾や問題点が噴出するでしょう。
2019年には府・市会議員選挙、知事・市長ダブル選挙もたたかわれます。この選挙で維新勢力を少数に追い込めば、「統合」計画ストップの可能性が生まれてきます。
4)私たちは、統合問題が持ち上がって以来、「2重行政論」「200億円無駄論」など橋下・松井維新がふりまいた俗論を退けてきました。いまでは彼らの公式の議論からもなりを潜めていますが、「都構想」の実績イメージつくりには利用されています。
最近、国立大学の統合が話題に上っています。少子化への対応のように報道されていますが、2004年の国立大学の独立行政法人化を起点として、運営費交付金が年々削減され、それも政府の要求に沿うように誘導的なものになっており、各大学が財政的に苦しくなっていることが原因です。これに、軍事研究資金という“甘い罠”も用意されています。大阪市大が防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に応募、採択されたという事実は、決して偶然ではないと思います。医学・理工系を重視した新大学の構想など、彼らが描く新大学の姿は、安倍政権が目指す「戦争する国づくり」に貢献する大学への最先端を行くものではないでしょうか。二つの総合大学をスクラップして、ひとつにしてしまう。1+1が2未満になる、中身も時の権力の言うがまま、きな臭い研究が大手をふるう、という事にならないでしょうか。
5)大阪での大学をめぐる攻防は、全国の「統合」問題の試金石になりかねません。来年春に府大・市大の両法人が解散し、新法人が設立される予定です。新法人の理事会のメンバーはどうなるのか、府大・市大の伝統は守られるのか、しっかり注視する必要があります。
伝統については今日の講演で改めて確かめたところです。また、皆さんのなかで自身の大学生活をあわせて思うところは様々だと思います。ただ、両首長・理事会・学長などごく少数の人たちに府大・市大の行く末(将来)を任せるわけにはいかないではありませんか。大学の自治とは何なのか、だれのための自治なのか、大学の理念はどういうものなのか、学内の教職員・学生はもとより同窓生・地域の方々など、幅広い人たちの関与で、両大学の存続と発展を要求していきましょう。
今日の講演の内容をはじめ両大学の関係者の声をパンフレットにする計画です。統合問題は、未解決の課題が山積しており、これから正念場を迎えます。学内の議論を応援し、おおいに関わっていきましょう。