
お金の貸し借りや売掛金の回収、貸家の敷金返還などのトラブルの早い解決のために少額訴訟が注目されています。少額訴訟は、争う金額が60万円以下で弁護士費用も負担せずに自分で解決したい、というときに原則1回限りの法廷で判決をもらえます。
少額訴訟も裁判であることから、公開されています。つまり誰でも傍聴できるということで、大阪簡易裁判所に傍聴に行ってきました。

裁判所に用があって訪れるのは25年ぶりです。事前に大阪簡裁に少額訴訟の事件の有無を問い合わせて、「いつでもどうぞ、毎日少額訴訟ありますよ、開廷表を見てください」と言うことでした。大阪天満の裁判所の敷地には地裁・高裁のある本館の隣の別館に簡裁があります。このことを知らずに本館をうろうろ。警備員さんに尋ねて、当日の簡裁の開廷表をやっとみつけました。少額訴訟の事件は3件のみで、貸金請求・委託料返還・敷金返還の事件が各1件づつ。
ファイルにとじられた開廷表をじっくり見ている人がいて、10時の開廷に遅れたためか、当日キャンセルになったためか、「貸金請求」の事件は傍聴できませんでした。
「委託料返還」事件は、原告はIT企業らしき会社の若い代表者が代理人弁護士と出廷。法廷といっても楕円のテーブルを挟んで、裁判長と書記官、原告関係者がふたり、傍聴席と法廷に仕切りもなく、傍聴は私一人。訴えられた被告側は出廷せず、裁判長が被告から「訴状のとおり」との答弁書が提出されている旨が話され、原告の主張通りの判決を言い渡しました。この間約5分。閉廷後、弁護士さんに少額訴訟について聞きたくて声をかけたら、原告の顧問税理士だと間違えられてしまいました。30万円余の事件に恐縮されていましたね。弁護士費用はいかほどなのでしょうか。
「敷金返還」事件も、被告側は出廷せず。ただし、被告側から通常裁判への移行が主張されているため、通常裁判になる旨を裁判長より伝えられました。被告には代理人弁護士がついているようです。裁判長から原告の主張の確認と立証を準備するよう述べるとともに、敷引き特約についての最高裁の判例があることを指摘して検討を促す発言がありました。
この法廷は司法委員が臨場、原告代理人の弁護士はおらず、傍聴席から原告の書類を指摘する人がいたり、通常の裁判にはあり得ないことも。裁判官もおやおやという顔をされましたねえ。この間10分。この事件は原告側が傍聴者二人をともなって意気込んで弁論に臨んだものの、大分雲行きが怪しくなったという印象をうけました。物件の引き渡しが完了しているかという論点もあるようで、通常裁判となれば素人では弁護士がついた被告側に対抗できないのではないでしょうか。争う金額に比べて原告側に厳しくなりそう。
原告・被告の丁々発止の応酬は見られませんでしたが、事実関係がはっきりしている場合は原告の勝利判決がとりやすい印象をうけました。貸金の回収など、大いにこの制度を利用したらどうでしょうか。お奨めします。わたしも傍聴席で応援いたします。