2014年度税制改正で法人税について交際費の取り扱いが改められました。その中身は、大企業に対する大幅な減税といってよいでしょう。個人事業者にとっては、従来通り事業にかかわる交際費は必要経費になりますし、中小企業(資本金1億円以下の会社)にとっても年800万円以下の交際費はそのまま費用になりますから、関係ないんではないかと考える向きもあろうかと思います。しかし、これまで交際費に課税されていた大企業にとっては接待(飲食に限定)を利用した営業活動の幅が広がってきたともいえるわけです。中小企業にとっては、これは脅威ではないでしょうか。
そもそも「交際費に課税される」とか「交際費の損金算入が認められない」とか「大企業が飲食に使った交際費の半額まで非課税にする」とか、一般の方には意味が分からないのではないでしょうか。取引先を飲み食いに誘ってその代金を払ったら追加で税金を払わなければならないのか、お金を払ったのに会社の経理では払ったことにならないの? 費用に計上してはいけないのか、という疑問が出てくると思います。
これは会社(法人)にとって、税金の計算の仕方の問題です。会社の経理・簿記の上では、接待交際のために使ったお金は「費用」に間違いありません。これ以外に経理処理の方法はありません。交際費については、会社経理と税法での取り扱いとを合わせる経理はできません。この処理は法人税の申告書で会社の決算書を基に計算します。
では、今回の改正の影響を具体例で検討してみましょう。
(例 売上10000万円、売上原価7000万円、費用〈交際費のみとする〉1000万円、税率40%、とします)
大企業(資本金1億円超)の場合
改正前
税引前利益 10000−7000−1000=2000
税金の計算 2000(税引前利益)+1000(交際費)=3000(課税所得)
3000×40%(税率)=1200(法人税)
税引後利益(当期純利益) 2000(税引前利益)−1200(法人税)=800
新税制
税引前利益 10000−7000−1000=2000
税金の計算 2000(税引前利益)+500(交際費の半分)=2500(課税所得)
2500×40%(税率)=1000(法人税)
税引後利益(当期純利益) 2000(税引前利益)−1000(法人税)=1000
中小企業の場合
税引前利益 10000−7000−1000=2000
税金の計算 2000(税引前利益)+200(交際費のうち800超部分)=2200(課税所得)
2200×40%(税率)=880(法人税)
税引後利益(当期純利益) 2000(税引前利益)−880(法人税)=1120
(新税制でも計算は同じ。ただし、大企業と同じ計算も選択できるが、この例では不利)
税引後利益(当期純利益)がその会社に残るお金=留保金額になります。
このように大企業にとっては飲食による接待営業に乗り出すメリットが大きいと考えられます。従来通りの交際費の支出では、税金の負担が減るだけ。一方、中小企業にとっては、「飲食ひとりあたま5000円以下は交際費にあたらない」取扱いをできるだけ心がけ、その他の接待を800万円以内でおさめることが賢明です。
(2013.12.19)