毎年8月6日から15日にかけては映画やマスコミで戦争と平和・原爆にかかわる企画がたくさんありますが、終戦62周年の今年もその例外ではありませんでした。私は、映画は「ヒロシマ・ナガサキ」、テレビは「はだしのゲン」を観ました。「ヒロシマ〜」は日系米国人のスティーブン・オカザキ監督のドキュメンタリーで、被爆者の語りを軸に当時の米軍の記録フィルムなどを使って構成されていました。「はだしのゲン」の原作者・中沢啓次さんも映画の中で証言していましたので、テレビの「ゲン」を観ながらその証言を思い出すことができました。我が家では「ゲン」の漫画本は二人の子供とも読んでいますので、お盆前に帰阪した息子と本を手にその放送が話題になりました。
被爆体験というものは、この国の文化の中で大きなテーマとなっています。文学作品でも原爆を取り上げたものがいかに多いか。漫画では30年前に発表された「はだしのゲン」が古典とも言えそうです。「ゲン」が今なお読まれ、テレビでも扱われるのは、それが作者の原体験であるとともに「反戦」の家族からの告発であり、それを貫いた父親の姿がゲンの被爆後の生きる力になっているからではないでしょうか。
この夏は、「ゲン」とは少し違う角度から「夕凪の街 桜の国」という漫画が映画化されました。この映画を観ていませんが、原作本(こうの史代、双葉社)を読みました。大作「はだしのゲン」とは対照的に本文100ページほどですが、二度三度、否、五度六度読んで「ああ、そうか」と噛みしめられる作品です。
内容は読んでもらうとして、その「夕凪の街」に8年ぶりに墓参りに帰りました。初めて新交通システムに乗って実家から市の中心部に出てみると、高層のビルがたくさん建っていて、本通りのアーケードもずいぶん高く感じられました。平和公園はあまり変わってなく、原爆資料館前の長蛇の列をあきらめて、すっかり変わったかつて知った道を歩いていると袋町小学校の「平和資料館」に出会いました。参観者は2・3人でしたが、中では同校の校舎の建て替え時に発見された被爆直後の安否などを伝える伝言がそのまま展示されています。また、あの時との時間が縮まった気がしました。(2007.9)
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